花火
いつも一人で歩いていた道
今日は
目の前にある
大きい背中。
最近少し
冷たくなってきた風も
藤のおかげで
横に流れていく。
駅に着いて
いつもより一本早い
電車に乗る。
朱美には昨日
連絡しておいた。
藤は電車に
乗ってる間も話していた。
周りにいる
同じ制服を着た人学生が
チラチラと藤を見ている。
藤は気づいてない。
あたしは自分より10センチ以上背の高い藤を見上げながら
藤の話を笑って聞いていた。
藤の話は楽しかった。
ずっと聞いていたいと思った、
電車に乗っている時間が
いつもより
ずっと短く感じた。
学校の最寄り駅に着いて
歩き出す。
同じ学校の生徒で
溢れかえっている
改札。
人の波に
流されそうになる
私の手首を
藤が掴んだ。
びっくりして藤を見上げると
笑って
「香どっか行っちゃいそうだった」
と言った。
その笑顔に
その行動に
私は頬が赤く染まる。
恥ずかしくなって
俯くしかなかった。
改札の直前で
手が離れる。
私が名残惜しそうに
藤の手を見つめていたことは
きっと藤は知らない。