【実話】2014〜あの頃〜
だからこの日の勉強会で松井が何気なく言った、



「俺ボブとかショートとかめっちゃ好きなんだよね、昔のあっちゃんみたいな。」



っていう言葉を間に受けた私は、


確か9月の終わりにはずっと小さい頃から切ったことのなかった腰までロングの髪を、



思い切って肩にかからないくらいの長さまで切った。





もちろん松井にはタイプを聞いて切ったって察されないように、


「なんかイメチェンしてみたかったんだよねー」とかテキトーなことを言ったし、






後々、「スカートとかいかにも女子!みたいな格好嫌いなんだよね。」


って言葉を間に受けて、




ずっと好きでよく着ていたlizlisaのワンピースもスカートも封印して



着たくもないスウェットやスキニーのパンツを身にまとって


履きたくもないコンバースのスニーカーやナイキのスニーカーを履いていた。





他にもずっと二重になりたくて遊ぶときだけ使っていたアイプチも、




松井が「別に二重にしたって岡田変わらないし、可愛くなってないしやめたら?」






なんて言うから、全部やめたんだ。







髪も服も、メイクも、なんなら選ぶ友達だって、



全部松井に好かれるためだったんだ。







いや、いつのまにか松井に嫌われないために変わっていた。









私が好きになればなるほど





松井は私から離れていって







もう辞めよう、諦めよう、って思うたびに







優しくして離れられなくする。







そんな誰よりも残酷で優しくて





言葉一つで私の全部を変えちゃうような人だったんだ。











周りからの


「もうやめたら?」って言う声も届かなくなっちゃうくらい、










ほんとにほんとにただ大好きで、






願い事が一つだけ叶うなら、絶対「松井に好きになってほしい」って願ってた。







ずっと振り向いてほしくて、ただそれだけで私は動いてたんだ。
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