王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「それで、無理に連れて帰ることもできずにいるのだそうです」
カイラは蒼白になり、今にも意識を失いそうだ。
「本当なんですか? カイラさん」
カイラを支えながらロザリーが効くと、クロエは困った様子で肩をすくめる。
「正直、信じられるかどうかは半々だと思います。侯爵様は、カイラ様に内密にお越しいただいて確認してほしいと言うんです。……確認するだけなら、私でも出来ますと言ったのですが、聞き入れてもらえなかったことが気になって……」
侯爵からの情報じゃなければ飛びつくところだ。
けれど、信用していいかに疑問が残る。カイラをおびき寄せ、排除するための策かもしれない。
「侯爵様はナサニエル陛下には伝えず、カイラ様だけに言うようにと私に指示をしたんですが、私は陛下に判断を仰いだ方がいいと思います」
クロエは目を伏せたまま続ける。
「本人が嫌がっていたとしても、本来ならばアイザック様を城に連れてきて検分するのが普通です。そう思えば、無理に話に乗る必要はないと思います。どうか、ナサニエル陛下に相談し、判断を仰いでください」
「……そうね。でも、わずかでも手掛かりがあるのならすがりたい気持ちもあるわ」
「侯爵はカイラ様のことを軽く扱っておられます。平民上がりだと。おひとりで行ってはなにがあるか分かりません」
まだ迷いの見えるカイラに念押しして、クロエは戻っていった。