王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました


「書庫に入る許可が欲しい?」

アンスバッハ侯爵家の執事・グランウィルは、新しい料理人・レイの要望を聞き、眉を顰めた。

「なぜですか?」

「新しい食材を調べたり、レシピ本が無いか見てみたいのです」

なにせ、南方とは違う料理があるようなので……と、彼は付け加える。

「ふうむ。しかし旦那様は珍しい料理をご所望されている。そなたの南方料理が大変お気に召しているようだが」

「しかし、私は土地の料理を学びたいのです。料理人は探求することを辞めたら終わりです。新しい料理を知り、これまでの技術の融合させ、新たな料理を作りだしたいのです」

「……そういうものか。では旦那様の許可を取るまでは待つように」

「はい!」

新しく入った料理人は、非常に働き者だ。料理の腕前も素晴らしいが雑用も嫌がらずやるようで、厨房内での評判は上々だ。
南方出身ということで南方料理をよくだしてくるが、いろんな国の料理を知っているようだ、と料理長は言っていた。

(拾い物だったのかもしれないな)

今日、使用人用の料理を作ったのはレイだ。
グランウィル自身も賄いとして彼が作った料理を食べ、その味に舌包みをうった。
彼がもっと料理を追求したいというのなら、許可するのが主人のためになるというものだろう。

とはいえ、主人は今日も帰りが遅い。
確認事項はまとめて書きつけて執務室に持っていこう。
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