王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「少なくとも王都の平民層はまとまっていますよ。ナサニエル陛下の命で、ずいぶん前から私達が動いているのです」

そう言うのはジョザイアだ。
ザックが水道設備の整備をしていたころから、平民層の第二王子への支持は徐々に高まっている。
ジョザイアは平民が力をつけるためには、数が必要で、まとまることとまとめ上げる人物が必要だと説き続けてきたのだという。

「今はゴードンという富裕層の男が中心となって思想をまとめ上げています。平民が議会に参加できるよう、嘆願すると言っています」

「それは悪くないな。貴族だけで物事を決めるのはおかしいと前から思っていた。……だが、父上がそのような思想を許すのは意外だ」

「陛下はもうずっと前から、機を狙っています。先日発令された税法により、平民たちの不満は最高潮に高まっていますから、実行するにはいい頃合いでしょうね」

「税法?」

詳しく聞くと、平民の税率を上げる法令らしい。どうやら外貨の下落に伴う緊急措置で、ザックの軟禁中に審議されたものらしい。

「それの許可を父上が出したのか?」

再び、ザックの中にナサニエルへの不信感が湧き上がる。
彼の意図がどうにもつかめない。ザックを守るような行動をしたかと思えば、正反対の暴君のようなこともする。

「……陛下のご意思は、いずれご本人の口から明かされると思います」

ジョザイアは控えめに笑って言うと、それ以上を口にすることはなかった。
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