王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
*
馬車が走り出してから何時間たっただろう。
カラザまでは王都を出て北方街道をまっすぐに四時間ほど進んだところにある。
早朝に出て、ようやく日帰りが適うような距離だ。
カラザよりひとつ前の街で、朝とも昼ともつかぬ食事をとり、再び馬車に乗り込む。
しばらく走って、ロザリーは緑のにおいに気が付いた。
「なんか、森のにおいがしますね」
「街道沿いには大きな森はないぞ?」
「でも……」
ロザリーの田舎で嗅いだような森のにおい。集中して周りのにおいを嗅いでいく。
馬が蹴り上げるときに湧き上がる土のにおい、森の空気を含んだ風。そしてわずかに水のにおいがする。
「水……。このあたりに川はありますか?」
「川は街道からはずいぶんとずれているはずだが。……おい、今はどこを走っている?」
ナサニエルが窓を開け、護衛に問いかける。
護衛は馬の速度を調節し、小窓と並ぶような位置につける。
「町からは少しそれた位置に向かうそうです」
「なぜだ? そんなところにアイザックがいるのか?」
「御者の男はそう言っていますが」
警戒すべきかもしれません、と護衛は目で訴える。ナサニエルは無言で頷き、小窓を締めた。
「ロザリンド嬢は嗅覚がいいんだな」
「はい。毒見に抜擢されたのもこの嗅覚のおかげですから」
「では君に伝えておくことがある」
ナサニエルは居住まいを正すと、ロザリーに顔を寄せ、小さな声で告げる。
馬車が走り出してから何時間たっただろう。
カラザまでは王都を出て北方街道をまっすぐに四時間ほど進んだところにある。
早朝に出て、ようやく日帰りが適うような距離だ。
カラザよりひとつ前の街で、朝とも昼ともつかぬ食事をとり、再び馬車に乗り込む。
しばらく走って、ロザリーは緑のにおいに気が付いた。
「なんか、森のにおいがしますね」
「街道沿いには大きな森はないぞ?」
「でも……」
ロザリーの田舎で嗅いだような森のにおい。集中して周りのにおいを嗅いでいく。
馬が蹴り上げるときに湧き上がる土のにおい、森の空気を含んだ風。そしてわずかに水のにおいがする。
「水……。このあたりに川はありますか?」
「川は街道からはずいぶんとずれているはずだが。……おい、今はどこを走っている?」
ナサニエルが窓を開け、護衛に問いかける。
護衛は馬の速度を調節し、小窓と並ぶような位置につける。
「町からは少しそれた位置に向かうそうです」
「なぜだ? そんなところにアイザックがいるのか?」
「御者の男はそう言っていますが」
警戒すべきかもしれません、と護衛は目で訴える。ナサニエルは無言で頷き、小窓を締めた。
「ロザリンド嬢は嗅覚がいいんだな」
「はい。毒見に抜擢されたのもこの嗅覚のおかげですから」
「では君に伝えておくことがある」
ナサニエルは居住まいを正すと、ロザリーに顔を寄せ、小さな声で告げる。