王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「アレンに安全なところまで逃がすように言ってあるが……」
「……戻ってくる馬がいますが、あれがアレンでは……?」
ザックの私的に、ナサニエルの顔色が変わる。
「アレン、カイラはどうした?」
「申し訳ありません。山道に入り、手綱を取ろうとした瞬間に、馬車の重みで傾いで……」
そのまま、馬車ごと傾斜を駆け下りていったとアレンは言った。
下りて探すにも、アレンひとりでは二次遭難になるだけだ、と応援を頼みに来たところだという。
「こいつらにかまっている場合ではないな。アイザック探しに行くぞ」
「もちろんです。ロザリーも一緒ですよね」
「陛下。こいつらはどうすればいいんです?」
ケネスが問いかける。盗賊を装った男たちは、ナサニエルやその護衛によって、縛られていた。
「記憶をなくすくらいぼこぼこにしておいてくれ。侯爵には私が死んだと思わせねばならないのだ。誰かひとり、金で言うことを聞きそうなやつをひとりだけ残しておいてくれ」
「はあ」
その返答に、「俺が報告に戻る」と縛られた男たちが次々に言う。
侯爵の人望の無さにケネスは少し呆れた。
「いくぞ、アイザック」
そのまま馬にまたがり行ってしまう父親を、ザックは慌てて追いかける。
「悪いがケネス……」
「了解了解。陛下のお望みどおりにしておくよ」
安請け合いをしてくれるケネスをありがたく感じながら、アイザックは父の後を追った。