王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
侯爵は荒々しく妹の部屋の扉を開け、じろりと睨んだ。

「マデリン、人払いをしろ」

「あら、お兄様。コンラッドとのお話は終わったのですか?」

「いいから、早く!」

急き立てられ、マデリンは眉を顰めたまま、侍女たちに退出を促す。

「コンラッドは誰の子だ」

マデリンはピクリと眉を動かした。けれども、平然とした顔で続ける。

「陛下との子ですわ。決まっているでしょう」

「本当だな。ではそれをつき通せ」

「誰が、そのような嘘を?」

「クロエだ」

マデリンは小さく眉を顰める。

「……おかしなことを言うのね。器量はよろしい娘ですけれど、コンラッドにはふさわしく無いかもしれませんわ。不敬罪で罰してしまいましょうか」

「噂が立つと、足もとを掬われるのはこちらの方だ。言われてからコンラッドを見れば、ナサニエルとの共通点の無さに気づく。それに、コンラッド自身がクロエを手放したがらない」

「そうですか」

マデリンは少し考え込み、「では、私がなんとかしましょう」という。
侯爵が片眉を上げて彼女を見つめると、自信満面で頷き返す。

「反抗的な態度を取れないように、しっかり調教して差し上げます。コンラッドの妻として、恥ずかしくないようにね」

妹の目に、カイラ妃が現れたときと同じ光が宿るのを、侯爵は見た。
あのときも、女の嫉妬は怖いものだと思ったものだ。
マデリンはまだ、これほどの怒りを身の内に宿らせていたのか。

「女のことは女に任せてくださいませ」
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