王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました


アンスバッハ侯爵の屋敷を抜け出したレイモンドとオードリーは、平民街に入った。
現在、レイモンドは普段の服装に目深に帽子をかぶっただけだが、オードリーの方は、完全に男装している。
書庫でのやり取りで、オードリーが毒を作ることを強制されたと伝えてきたとき、レイモンドはここを脱出することを決めた。

レイモンドとオードリーは、自分で調べられるだけの屋敷の間取りや使用人の動きを報告しあい、脱出計画を立てた。毒を渡してからは、オードリーへの警戒も甘くなり、直接話をすることもできた。
そうして、レイモンドはオードリーへ自身の服を渡して男装させ、使いを頼まれたふりをして屋敷を抜け出したのだ。

「このあたりから平民街よ」

ふたりは、とりあえず平民街まで逃げてきた。一番いいのはイートン伯爵家に保護を申し出ることだが、伯爵が帰っていない時間では警戒されるだけだと判断したのだ。

「さらに変装したほうがいいかもしれないな」

レイモンドは市場の方へと向かう。後ろをついていくオードリーは、街に漂う空気に違和感を覚えていた。

「レイモンド、なんか……変じゃない?」

「変って?」

「なんか妙に静かってっていうか」

< 163 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop