王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
けれどもクロエは絶対に怯まない。震えてしまう体に鞭打って、決して折れない心を鋭いまなざしで表す。
「……コンラッド様が生まれた当時、すでにナサニエル陛下とマデリン様の仲は冷え切っていたと伺っております。父は、マデリン様のご懐妊を不思議に思ったそうです。ですが、当時はカイラ様が離宮にお下がりになられていた時期でしたし、なにより陛下が否定しませんでした。ですから誰も異を唱えることはなかったのでしょう。けれど私は、ナサニエル陛下のお人柄を知ってから、あの一途な方がと疑問がわくようになりました。そんな時に、マデリン様の仕立て師を見かけたのです」
「……仕立て師?」
「お会いになったことはありませんか? 名前はアーロ様。マデリン様のドレスをもう二十年近く手掛けていると聞いています。あなたによく似た栗色の髪と、青の瞳をお持ちです」
王家の男系は、特徴的な緑の瞳を持っている。疑惑を抱いてから、クロエは歴代王の肖像画がある部屋に入って確認したが、みな、緑色の瞳の持ち主ばかりだった。
ナサニエル陛下も、第一王子であるバイロンも、アイザックもそうだ。
コンラッドだけが青の瞳だが、青い目は珍しいものではないし、栗色の髪はマデリンにそっくりだ。だから、単に母似なのだと周囲は思っていたのだろうし、王位に関わることはないだろうと目されていた第三王子の容姿など、そこまで気にしていなかったに違いない。