王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました

クロエは続けて口を開いた。まだ糾弾されるのかと身構えたコンラッドに、今度は甘い蜜を与える。

「民を、国を守ると思えないのならば、王になどなるべきではないのです。コンラッド様には向いていませんよ。私がその立場でしたら、絶対にやりません」

高尚な御託を並べられた後での、やりません発言に、コンラッドは目を点にしてクロエを見つめる。

「な、なんだと?」

「私は甘やかされた末っ子ですもの。そんな責任のある立場などごめんです。もっと自分の好きなことだけやって生きていたいです。コンラッド様もその意味では私に近しいと思っていたのですけれど……」

クロエが上目づかいでコンラッドを見る。

「責任を取る立場ではなく、気ままで自由な第三王子。コンラッド様には、とてもお似合いだったと思いますけど?」

「それは……たしかに」

コンラッドの目が一瞬横を向く。納得しているようだ。
クロエの目にも、コンラッドはたしかに第三王子の立場を満喫しているように見えた。侯爵に、王になれとそそのかされるまでは。

「ご自分がなにを望んでいるのか、ちゃんと理解したほうがいいですわ。自らが王になる必要が、本当にありますか? もし、陛下や兄上様たちが生きていたら、あなたは控えの立場。もちろん国のために尽くしていただかなければなりませんが、自ら舵を取らなくてもいい分、気楽でいられるでしょう」
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