王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
新しい国へ


アイザックとケネスは、数名の護衛を連れ、ようやく王都の門が見えるところまでたどり着いた。
ナサニエルとカイラ、そしてロザリーは別の馬車で、王都へと向かっている。馬を飛ばしてきたザックたちの一団よりはずっと遅れてくることだろう。
バイロンはまだ長距離の移動に耐えられないため、ジョザイアと共に留守番だ。

「さて、いよいよだな。俺たちの仕事は、王都で暴動を起こし、城に乗り込み、議会に平民議員を入れることを了承させることでいいんだよね、ザック」

「そうだな。ゴードン殿が扇動している。民衆の熱気は高まっているだろう。貴族議員もバーナード侯爵派は半数近くがこちらを支持してくれるようだ」

まっすぐに王都を見つめながら、ザックはどこか上の空で返事をした。

「……君、これから大きなことをやろうとしている割には覇気がないね。どうせロザリーのことでも思い出してるんだろうけど」

ケネスに図星を刺されて、ザックはそっぽを向く。
せっかくの再会もまたすぐ別れることになり、彼女を満喫しきれていない。

出がけに、ザックは口を酸っぱくして、ロザリーに安全確保について語った。

『絶対に無理はするなよ。クロエ嬢はイートン伯爵の娘ということである程度は保護されるべき対象だが、今の君は母上の侍女という立場しかない。なにかあれば一番に切り捨てられる立場だ』

においで人の居場所を捜せる上に、侍女姿で歩いていても違和感がないという点で、ロザリーがクロエの安全を確保するのに適任なのはザックも認めるが、彼女に危険が及んだ時のことを考えると、気が気ではなかった。
なのに、彼女はへらりと笑うって言ってのける。
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