王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
*
その一報は、王国警備隊によってアンスバッハ侯爵に伝えられた。
「平民街広場に集まった民衆が、貴族議会に平民議員枠を設けるよう求めて、大挙してきました」
「……なんだと?」
それは、アンスバッハ侯爵にとっては晴天の霹靂だった。
平民とは、貴族の命令におとなしく従うものだと彼は信じている。
その前提が覆されることなど想像もしていなかったのだ。
だが、すぐに気を取り直す。王城は守りが固い。いくら平民が束になってかかってきたところで、城門を超えることはできないはずだ。
「虫がいくら寄り集まったところで、できることはたかが知れている。放っておけ」
「それが……。その集団を率いているのが、どうもアイザック殿下らしいのです」
「……なんだと?」
アンスバッハ侯爵は眉を寄せ、窓から外を眺めた。
城門の入り口に警備兵たちが固まり、門外の平民たちが入ってこないよう警備を固めている。
そして貴族街をまっすぐに城に向かってくる一団が見える。前列に馬が五頭。その中でも先頭にいる人間の髪は漆黒だ。
「死んだのではなかったのか……!」
報告では、たしかにアイザックは死んだはずだった。
ナサニエルとカイラを屠った後、生きて王都に戻ろうとしていたアイザックと出会い、戦闘となった。多くの者が差し違えたものの無事に殺害し、残ったのは自分だけだと、御者がボロボロの姿で報告してきたはずだ。
その後、侯爵は自分が指示したという証拠を消すためだけに、その御者を殺した。すでに他の身元不明の遺体とともに埋葬されている。
あの報告が、嘘だったというのだろうか。
その一報は、王国警備隊によってアンスバッハ侯爵に伝えられた。
「平民街広場に集まった民衆が、貴族議会に平民議員枠を設けるよう求めて、大挙してきました」
「……なんだと?」
それは、アンスバッハ侯爵にとっては晴天の霹靂だった。
平民とは、貴族の命令におとなしく従うものだと彼は信じている。
その前提が覆されることなど想像もしていなかったのだ。
だが、すぐに気を取り直す。王城は守りが固い。いくら平民が束になってかかってきたところで、城門を超えることはできないはずだ。
「虫がいくら寄り集まったところで、できることはたかが知れている。放っておけ」
「それが……。その集団を率いているのが、どうもアイザック殿下らしいのです」
「……なんだと?」
アンスバッハ侯爵は眉を寄せ、窓から外を眺めた。
城門の入り口に警備兵たちが固まり、門外の平民たちが入ってこないよう警備を固めている。
そして貴族街をまっすぐに城に向かってくる一団が見える。前列に馬が五頭。その中でも先頭にいる人間の髪は漆黒だ。
「死んだのではなかったのか……!」
報告では、たしかにアイザックは死んだはずだった。
ナサニエルとカイラを屠った後、生きて王都に戻ろうとしていたアイザックと出会い、戦闘となった。多くの者が差し違えたものの無事に殺害し、残ったのは自分だけだと、御者がボロボロの姿で報告してきたはずだ。
その後、侯爵は自分が指示したという証拠を消すためだけに、その御者を殺した。すでに他の身元不明の遺体とともに埋葬されている。
あの報告が、嘘だったというのだろうか。