王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「ケネス様はクロエ様を大事に思っているじゃありませんか。それは結婚しても同じだと思うのですけど」
クロエはゆっくりと首を振る。
「ロザリーは辺境の男爵家で育ったからそう思うのよ。王都の貴族なんて、もっとドライよ。結婚すれば他家に人間になるのだから、今まで通りにはできないの」
「そうなのですか」
「そうよ。……もうっ、本当にあなたは常識がないわね。そんなんでアイザック様を助けられるの?」
ぷい、とそっぽを向かれたが、これは心配されているのだろう。クロエとはそこまで親しいわけではないが、彼女が冷たい人ではないことはロザリーには分かっている。
「もちろんですっ」
「城でなにかするときは、必ず相談しなさいよ。でないと私がお兄様に怒られるわ」
「はいっ」
なんにせよ、ひとりで行動するよりもずっと心強いことは確かだ。
結局、クロエは行儀見習いという形でカイラの侍女を勤めることになった。筆頭侍女であるライザとともに毎日カイラに仕えるロザリーとは違って、週に三日ほどの勤めになるが、イートン伯爵とのパイプにもなってくれるので、ロザリーはとても心強く感じていた。