王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
オードリーは、食事のトレイを下げに来たのアンスバッハ家の執事、グランヴィルに問いかけた。
「私はいつまでここに居なければならないのですか」
「旦那様から許可が出るまでです」
「でしたらせめて、家族に居場所だけでも知らせたいのですが」
「恐れながら、オードリー様のご家族はアイザック第二王子とあまりに深いご縁があるようでして。彼の容疑が晴れていない今、まだお知らせすることは許可できません」
「私の容疑は晴れたんですよね?」
「あなたは白に近いグレーというところですね。なにせあなたには知識がある」
グランウィルの表情は読めない。オードリーに対して、そこそこ敬意を持った話し方をしてくれるが、まなざしは侮っているようにも思える
「私が持っているのは鉱物の知識です。その中に毒になる物体も含まれているというだけでしょう? 私は毒を作ろうと思ってこの学問を学んだわけではないわ。人の生活を発展させるために学問はあるんです。それを退行させるような行いはいかがかと思いますわ」
睨んで言っても、グランヴィルに堪えた様子はない。涼しい顔に微笑を浮かべて、ひやりとしたひと言を放った。
「あなたのような平民の後見をしてくださってるんです。滅多なことを言うと、ご家族がどうなるかわかりませんよ」
それでは脅しだ。仕方なく、オードリーは黙る。
大人しくなったことに気を良くしたのか、「夕飯はいつもの時間に、部屋にお運びします」と言いおいて去っていった。