王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました

 それから半年後、学術院を卒業したコンラッドは、ザックが継承するはずだったグリゼリン伯爵領を継ぐことが決まり、領地経営の勉強にいそしんでいた。
この頃には、彼はすっかり吹っ切れており、兄たちとの関係も良好なものとなっていた。

「道路を整備すれば、グリゼリン領の大量の森林を資源として利用できるはずだ。俺たちも協力するからな」

「どこまでやれるか分からないがやってみますよ。新しい土地のほうが、俺の悪評もないですし。比べられることもないでしょう」

コンラッドは自身の青い瞳を隠すように目を伏せる。
王都では、コンラッドは不実の子だという噂が横行している。ナサニエルをはじめとして、バイロンやアイザックがコンラッドを身内として扱うことで、声高に口にするものはいないが、本人には感じることもあるのだろう。

「臣籍降下するのも、今となっては願ったりです。この瞳に、王家は重たい」

「コンラッド」

「俺は俺の生きる道を捜します」

旅立ちの日の朝は、ケネスやクロエも見送りに来た。
コンラッドはクロエに未練がありそうな言動をしていたが、クロエににこやかに見送られ、引きつったままでの出立となった。

そして更に半年経った、爽やかな風の吹く日。
王都の鐘が、王太子の結婚を祝って、一時間おきに鳴り響いている。

「綺麗ね、ロザリー」

城の控室で、ロザリーは城の衣裳係にドレスを着つけてもらっていた。
ハイウェストのプリンセスラインの白のドレスだ。精緻なレースがあしらわれていて、全体的に清楚な印象がある。十七歳の若い花嫁ということで、若々しいデザインだ。
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