王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
クリスのキラキラとした瞳を見て、ロザリーはホッとする。
政治や国づくりなど難しいことは分からないけれど、ロザリーはできれば、子供が希望を失わない国であってほしいと思う。
そんな国を作るのが目標だとアイザックに言ったら、彼は柔らかく笑って同意した。
ふたりの共通の目標が、平和なものであることがうれしくて、ロザリーはますますザックが好きになった。

「さあ、アイザック様がお待ちですよ」

「はい」

扉の外にはイートン伯爵がいる。教会の祭壇の前までエスコートしてくれるのだ。

「ロザリー、綺麗だね。アイザック殿にやるのが惜しいなぁ」

「本当に。俺がもらっても良かったかもね」

うしろからケネスが顔を出し、からかうように笑って見せる。

「また! お兄様は茶化すのがお好きね」

ロザリーの脇をするりと抜けて、クロエがケネスの腕へとしがみつく。
クロエのほうがよっぽど結婚適齢期の令嬢なのだが、いまだブラコンを克服する気はなさそうだ。

ロザリーはイートン伯爵の腕を取り、思い切り笑って見せた。

「では行ってまいります!」

これから歩むのは、簡単な道ではないだろう。
犬の記憶のある元男爵令嬢が歩むには、少しばかり険しすぎるし山も高すぎる。
それでもこれだけ、応援してくれる人たちがいるのだ。挑む前から無理だなんて言いたくない。
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