王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「ええ。私の毒見係の仲が良いのね。彼女を助けるために来てくれたみたいよ」
(ロザリーのおかげか? あのクロエ嬢とまで仲良くできるとは、凄いな)
「そうなんですか。……彼女にお礼を言っておいてください」
「ええ」
十分ほど会話したところで、警備兵が「カイラ様そろそろ……」と言い、カイラは腰を上げた。
「私も、あなたを心配するみんなも、無実を信じています。どうか心を強く持って、自分の真実を曲げないようにしてね」
「もちろんです」
「それと……すみませんが警備兵の方」
カイラは、見張りの兵を振り仰ぐ。
「アイザックに差し入れなどをすることは可能ですか? せめて気晴らしにおいしいものでも食べさせてやりたいのですけど」
「全て警備隊のチェックが入ってからになります。手紙も構いませんが、中は確認させていただきます」
「そう。分かりました」
「あ、母上」
ザックは咄嗟に立ち上がり、母親の手を握る。カイラは驚いたように目を見開いた。
「抱きしめても構いませんか?」
「どうしたの、アイザック」
「……少し参っているのですかね。母親に甘えたいと思うなんて」
「まあ」
カイラはクスリと笑い、彼をギュッと抱きしめた。
両手を回しても背中を覆いきれないほど成長した息子に、ほんの少し感激しながら、カイラは部屋を出て行った。