王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
残されたザックは、ベッドに寝ころび、考える。
ずいぶんと状況は変わっているようだ。
あの母親が、離宮を離れる日が来るとは思わなかったし、クロエがその侍女をやるなんてもっと意外だ。
(ということは、ロザリーも城にいるのか)
彼女ならば、においの嗅ぎ分けで自分がカイラに触れたことが分かるだろう。
せめて元気でいることを伝える手段にならないかと、咄嗟に母に匂いを付けた。
「あとはオードリー殿のことだなぁ」
侯爵が、オードリーの後見を引き受けたのには、絶対に理由があるはずだ。
ウィストン伯爵が首謀者とされた輝安鉱殺人未遂事件の裏には、やはり侯爵がいるのではないかと思う。
ウィストン伯爵と繋がっていて、鉱物関係の知識に精通しているオードリーを囲う理由があるとすれば……。
(……毒)
これまで、ウィストン伯爵を通じて毒を得ていたと仮定すれば、その知識に詳しい人間は欲しいかもしれない。
もしそうなら、身の安全は保障されるだろう。が、必要なくなった途端に殺される可能性は高い。
「……どうするべきか」
悩んでみるも、自分の身さえ自由にならないのだ。ザックはため息をついて窓の外を眺めた。