王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました



「カイラ様、おかえりなさいませ」

ザックとの面会を終えて戻ってきたカイラとライザをクロエとロザリーが出迎える。
ロザリーは待ちきれずに、カイラが座る前に問いかけてしまった。

「カイラ様、ザック様は……」

本来なら不躾なことだが、カイラはそのあたりを気にしない。
ロザリーを近くに呼び、両手を握りしめて優しく笑う。

「大丈夫。元気そうだったわ。閉じ込められることには辟易していたけれど」

「良かった……」

ホッとしたのと同時に、ロザリーの鼻をザックのにおいがかすめる。

「あれ」

鼻をスンスンと鳴らしながら近寄るロザリーに、カイラは不思議そうな顔をする。

「どうしたの?」

「なんか、ザック様のにおいがします」

真顔になったカイラは、「ああ、そういうこと」とつぶやいて、ギュッとロザリーを抱きしめた。

「えっ、か、カイラ様?」

「あの子が私に抱き着いて来るなんて、おかしいと思ったのよ。あれは、あなたにそうして欲しいっていう意味だったのね」

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