王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました


あれはバイロンの葬儀を終えた夜のことだ。
実の子の早すぎる死に、マデリンはさすがにショックだったのか部屋に閉じこもってしまった。
その慰めを妻に頼み、侯爵は第三王子であるコンラッドの部屋を訪れた。

「お疲れ様です。伯父上」

「ああ。……ちょっと話があるんだが。人払いをお願いできるか」

「ええ、かまいません」

コンラッドが目配せするだけで、従僕や側近たちが部屋を出ていく。
コンラッドはといえば、ソファに思い切り背中を預け、だらしなく足を延ばしている。

コンラッドは第三王子ということもあって、誰からも甘やかされてきた。
父親のナサニエルはそもそもコンラッドには興味がなく、母親のマデリンは、コンラッドが望むままに物を与えるだけだ。

アンスバッハ侯爵も、第三王子が十二歳になるまでは興味などなかった。
傀儡の王にするべきはバイロンで、第三王子は王位に関わるには遠すぎる、と。

だが、バイロンが自身の考えをあらわにし、ナサニエル陛下を立てる政治をしたいと言ったことから、彼と甥の関係性は破綻した。

それ以降、侯爵は切り札になるかもしれないとコンラッドに目をかけるようになったのだ。

「お前、王太子になることについてどう思う?」

「は? 王位継承順で言えば、王太子になるのはアイザック兄上でしょう?」
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