王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「そうだな。だが、彼はバイロン様の殺害容疑もかけられている。そうでなくとも、平民の血が混じっているんだ。どう考えてもお前の方が王としての正しい血筋だ。自分でもそう思うだろう?」
「それは……まあ、そうですが」
コンラッドは戸惑っているようだった。彼は勉強も剣術も得意でない。それが今まで許されていたのは、責任のない第三王子の立場だからだ。
「お前が王になるのならば、政治に関しては私がサポートできる。だから難しいことは考えなくてもいいのだ。考えておいてくれ。私はこの国とお前をいい方向に導きたいのだ」
「そうですよね。……それはありがたい」
コンラッドはホッとしたように顔をほころばせた。
*
あのときの戸惑った様子とは一変して、今の彼の瞳は野心でぎらついている。
コンラッドが自分の思うように動きだしたようだと、侯爵は内心でほくそ笑んだ。
「それで、あの、……王となる者であれば、どんな望みも叶いますよね。そうでしょう?」
「まあ、そうだな」
コンラッドはマデリンによって甘やかされて育っている。欲しいものは何でも手に入れなきゃ気が済まない。
やや俗物すぎるところは問題だが、欲がはっきりしている人間は、扱いやすい。与えているうちは言うことを聞くのだから。
そのうち、自分ひとりでは王の椅子に座り続けられないということに気づけば、従順にもなるだろう。
だが彼が続けた言葉は、侯爵の予想を超えていた。