王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「どうかなさったの? お兄様」
「ちょっと調べたいことが出てきてね。しばらく国外に出る。その間は父上が様子を見に来るから、細かに報告してあげてくれ」
「国外へ? どうして?」
クロエはショックを受けたようにケネスに縋り付く。
「まだ確証はないから公にはできないが、……不穏な噂を掴んでね。それが正しいものか、調査してくる」
「危険はないんですか?」
「そうよ! 他の人に行かせるんじゃダメなの?」
ケネスが今、国を離れるとは、余程のことがあるに違いない。ロザリーも心配だったが、クロエはそれ以上に狼狽していた。
「大丈夫。俺がそんなヘマするわけないだろう?」
ぱちりとウインクをして、笑ってみせたケネスに、クロエはそれ以上追及するのを辞めた。
けれど、彼女が真一文字に閉じた口もとが、納得していないのを示していた。