王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「国王陛下が味方についてなお、アイザック様を解放できない現状を、お父様たちはどうお考えですか。はっきり申し上げれば、今の王城で最も権力を持っているのはアンスバッハ侯爵です。陛下の意見だって彼には抑えられてしまう。警備隊だって、アンスバッハ侯爵の言いなりでしょう? この先、アイザック様が無実の罪を着せられるのは必至です。でしたら、まずはお命だけでも救わなければ……そうでしょう?」
「だが。……こう言ってはなんだが、お前はアイザック殿のことは嫌いではなかったのか……?」
戸惑う父に、クロエは優雅に笑って見せる。
「嫌いですわ」
「ではなぜ?」
「それでも、アイザック様を救わなければ、お兄様が泣いてしまいますもの」
伯爵が、ぐっと息を飲んだ。「だが……」と言い返そうとするものの、適当な言葉が見つからないらしく、黙ってしまう。
親子の睨み合いはしばらく続いた。そこに割って入ったのはカイラだ。
「クロエさん。アイザックを守ろうとしてくれるのはありがたいわ。でも、結婚は一生のことです。クロエさんが犠牲になる必要などないわ」
ロザリーも、小さく頷く。ザックを守りたいのはロザリーも同じだが、クロエに犠牲になってほしいわけではない。
「ご心配はありがたいですけれど、私は平気です。もともと結婚する気が無いんですもの。誰としても一緒でしょう? それに、私がコンラッド様の妻になり、アイザック様が継承権を放棄すれば、私は王太子妃です。多少なり権力を持つことができます。マデリン様の言いなりになるだけでなく、自分の派閥を持てるようになれば、きっとお父様のお役にも立てるでしょう」
「だが。……こう言ってはなんだが、お前はアイザック殿のことは嫌いではなかったのか……?」
戸惑う父に、クロエは優雅に笑って見せる。
「嫌いですわ」
「ではなぜ?」
「それでも、アイザック様を救わなければ、お兄様が泣いてしまいますもの」
伯爵が、ぐっと息を飲んだ。「だが……」と言い返そうとするものの、適当な言葉が見つからないらしく、黙ってしまう。
親子の睨み合いはしばらく続いた。そこに割って入ったのはカイラだ。
「クロエさん。アイザックを守ろうとしてくれるのはありがたいわ。でも、結婚は一生のことです。クロエさんが犠牲になる必要などないわ」
ロザリーも、小さく頷く。ザックを守りたいのはロザリーも同じだが、クロエに犠牲になってほしいわけではない。
「ご心配はありがたいですけれど、私は平気です。もともと結婚する気が無いんですもの。誰としても一緒でしょう? それに、私がコンラッド様の妻になり、アイザック様が継承権を放棄すれば、私は王太子妃です。多少なり権力を持つことができます。マデリン様の言いなりになるだけでなく、自分の派閥を持てるようになれば、きっとお父様のお役にも立てるでしょう」