王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「……なるほど。だが、その条件なら、侯爵側のメリットが弱いな。アイザックに罪を着せて王子の座からは転落させたほうが、復権の可能性も無くなる。なぜこんな提案をしてきたんだ?」
「コンラッド様は、クロエさんに好意を持っておられるようでした」
「コンラッドが侯爵にごり押ししたということか? ……ふん、そんなことができたのか」
ナサニエルは顎に手を当ててしばらく考え込み、やがて頷いた。
「この話、受けたほうが得ではないかな」
「陛下!」
「それじゃあクロエさんが犠牲になります」
「クロエ嬢も了承している話なのだろう? 少なくとも、これでアイザックを救い出すことはできる」
予想外のナサニエルの言葉に、カイラもロザリーも言葉を失った。
「見損ないましたわ、陛下。私だってアイザックは可愛いですが、イートン伯爵だって娘さんが大事に決まっています。人を犠牲にして助かって、アイザックが喜ぶとでも?」
「今はアイザックを自由にする方が大事だ。生きてさえいれば、勝機はある。私はこの婚約に賛成だ」
その後カイラがどれだけ説得しようとしても、ナサニエルは主張を崩さなかった。
その日は喧嘩別れとなり、ナサニエルはすごすごと夫人の部屋を出ていったのだ。