王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
監視のない生活など久しぶりだ。ザックは不思議な気分で自分の両手を見る。
(今、俺は自由だ。どこにでも行ける。解放されたら、なによりもまず、ロザリーのもとへ飛んでいきたかった……)
なのに、ザックは酷く重苦しい気分だった。足が棒のように動かない。
(だがこれは真実ではない。無実といいながらも、俺が兄上の死に大きく関わっていると認めたことになる。俺は……ロザリーに顔向けできるのか?)
与えられた領地は、グリゼリン領。北東の外れの不毛の土地だ。
保証されたのは命だけ。処刑されないとはいえ、未来の展望はすべて奪われた状態だ。
以前なら、辺境地の開拓には興味を抱けたかもしれないが、今はそれを喜ぶ気分にはなれなかった。
コンコン、と扉がノックされた。
驚いたザックは「誰だ?」と叫ぶ。
「第二王妃様の使いで参りました。アイザック様、御目通りを願えますか?」
周りの人間に不審がられないようにだろう。大きな声でそう言い、彼女は返事を待っていた。
懐かしい声に、心臓がおかしなくらいに早鐘を打つ。ザックは声が震えるのを止められなかった。
「入ってくれ」
うつむいたままのロザリーが、紺色のお仕着せ姿で入ってくる。
「ザック様!」
ぱっと上げた顔は涙目で、手には母親から託されたのであろう包みを持っていた。
「ロザリー……」
待ち焦がれていた相手が顔を見せてくれたというのに、ザックの胸は暗く沈んでいた。
晴れ晴れしく解放されたなら、諸手を上げて迎えに行ったのに。
ザックは今の自分を見られるのが恥ずかしくてたまらない。
(今、俺は自由だ。どこにでも行ける。解放されたら、なによりもまず、ロザリーのもとへ飛んでいきたかった……)
なのに、ザックは酷く重苦しい気分だった。足が棒のように動かない。
(だがこれは真実ではない。無実といいながらも、俺が兄上の死に大きく関わっていると認めたことになる。俺は……ロザリーに顔向けできるのか?)
与えられた領地は、グリゼリン領。北東の外れの不毛の土地だ。
保証されたのは命だけ。処刑されないとはいえ、未来の展望はすべて奪われた状態だ。
以前なら、辺境地の開拓には興味を抱けたかもしれないが、今はそれを喜ぶ気分にはなれなかった。
コンコン、と扉がノックされた。
驚いたザックは「誰だ?」と叫ぶ。
「第二王妃様の使いで参りました。アイザック様、御目通りを願えますか?」
周りの人間に不審がられないようにだろう。大きな声でそう言い、彼女は返事を待っていた。
懐かしい声に、心臓がおかしなくらいに早鐘を打つ。ザックは声が震えるのを止められなかった。
「入ってくれ」
うつむいたままのロザリーが、紺色のお仕着せ姿で入ってくる。
「ザック様!」
ぱっと上げた顔は涙目で、手には母親から託されたのであろう包みを持っていた。
「ロザリー……」
待ち焦がれていた相手が顔を見せてくれたというのに、ザックの胸は暗く沈んでいた。
晴れ晴れしく解放されたなら、諸手を上げて迎えに行ったのに。
ザックは今の自分を見られるのが恥ずかしくてたまらない。