王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「用件を伝えるのにどれだけかかっているんですか、ロザリーさん」

入ってきたのはライザだ。素早く部屋の扉を閉め、目を眇めてザックを見つめる。

「母上の侍女か」

「アイザック様、無事の解放、心よりお喜び申し上げます。そして、そのお母上がお呼びです。カイラ様も心配されておられますよ。今のような熱い抱擁をお待ちになっているでしょう。どうぞ、部屋までお越しください」

嫌味ともとれる言葉の応酬に、ロザリーとザックは真っ赤になりながら目をそらす。

「……お邪魔して申し訳ないとは思いますが、城内ではおふたりの関係を不審に思われるような行動は慎んでくださいませ。さあ、今後について相談したいそうです。参りましょう」

「ああ」

「ロザリーさんも行きますよ」

「はい」とロザリーはうつむいたまま答え、ライザの後に続く。
ザックもポリポリと頭を掻きながらそこに続いた。


 カイラの部屋には、彼女だけではなくイートン伯爵もいた。彼の侍従がお茶を淹れているところだ。

「まあ、イートン伯爵、申し訳ありません」

ライザが素早く駆け寄り、給仕を交代した。

「気にすることはないよ。突然来てしまったからね。それよりアイザック殿。まずは良かった。解放おめでとう」

「イートン伯爵。……ですが」

「クロエのことは気にしないでくれ。私もあの子を止められなかった。あの子なりに考えはあるようなんだがね」

ポンと肩を叩き、ねぎらわれた後は、母親と対面する。
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