王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
それからトントンと事は進んでいく。
ザックの臣籍降下は、議会で承認され、国王の命令を持って執行された。

「謹んで拝命いたします」

ナサニエルが読み上げた命を、ザックは粛々と受け取った。
与えられる領土と家名に関する取り決めが行われ、彼は自分に与えられた権限内で、領土に人を派遣し、まずは屋敷を整えさせる。
慌ただしく過ぎる日々のなか、「食事会をしましょう」と提案したのはカイラだ。

これまでにザックを心配し、無実を信じてくれた人を招いての食事会を開くのだ。
イートン伯爵から全面協力を得て、料理人はレイモンドを派遣してもらえることになった。

第一王妃の目もあるので、会場は城の二階にある小さなサロン部屋だ。
バーナード侯爵をはじめとした、議会の面々が主だった招待客で、長い軟禁生活を終えたザックに、総じて好意的だった。

「アイザックの気に入っている料理人なのよ」

カイラはお礼をしながら、レイモンドの料理を紹介していく。
次々作られる料理は、給仕係が厨房とサロンの間を往復しながら運んでくれている。

今日のロザリーの仕事は、カイラの毒見係だ。レイモンドが作っているのだから問題はないとは思うが、匂いで確認したのち、一口ずつ食べてみせる。

(毒見だけでお腹がいっぱいです)

次から次へと持ってこられる料理にため息が出たところで、カイラがグラスを傾けながら苦笑した。

「ロザリーさん、もういいわ。私もお腹がいっぱい。あなたも少し自由にしていらっしゃい」

カイラが食事を辞めたので、ロザリーもお役御免となる。
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