王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
ロザリーは昨晩のカイラとの会話を思い出す。
夕食を終えた後、珍しくカイラはロザリーを談話室へと呼び出した。
「なんですか? カイラ様」
「座ってちょうだい」
カイラは、二人掛けのソファにロザリーを誘った。そして、彼女の手を握り、諭すように言ったのだ。
「私ね。お城に行こうと思うの」
「はい」
「陛下は、アイザックのことがあったから、もうしばらく離宮にいてもいいと言ってくださったんだけど、私はアイザックの母親ですもの。ここに隠れていては、あの子を守るために手を尽くすこともできないわ」
「そうですね。私もお供します」
「……それについて、真剣に考えて欲しいのよ」
勢いに水を差され、ロザリーは思わず黙り込んだ。
カイラは真剣な表情のまま、ロザリーの手を包む自らの手に力を籠める。
「あなたがアイザックを好いてくれるのは、とても嬉しいわ。だけど、今のアイザックの立場は微妙なの。このまま第二王子という立場を維持できるかも分からない。調査の結果いかんでは、処罰されてしまう可能性だってあるわ。仮にそうなった場合、私もあの子の母親として何らかの処罰を受けるでしょう。そうなれば、あなたを守ることができなくなってしまう。私についてくることで、あなたに危険にさらしてしまうことが怖いのよ」
カイラのまなざしからは彼女を心配する様子がうかがえる。毒見係になることを強硬に反対したときのように、カイラはロザリーのことを本気で心配してくれているのだ。
優しいカイラの心遣いに、ロザリーは心の奥が温かくなる気がした。