王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「……オードリーはその後どうだ」

「変わりませんね。採掘場所は夫しか知らなかったと言っています。金属判定については完璧でしたが」

能力はオルコット教授にもウィストン伯爵にも劣らないようです、と彼は続ける。

「ふむ。女は金では動かんことが多いから厄介だな。……そうだな。いつまでも強情を張っていると痛い目を見るということを分からせてやった方がいいな」

ちらり、とグランウィルに視線を送ると、彼は意を得たとばかりに頷いた。

侯爵は一息つき、ワインと共に持ってこられた菓子をつまむ。

「……うまいな。チーズ入っているのか甘くもない。酒に合うな」

「はい。新しく雇った料理人がなかなかの腕前でして」

「ほう? どこで修行していた男だ?」

「南西部の商人の屋敷で勤めていたそうなのですが、事業の失敗で料理人は解雇になったんだそうです。一念発起、王都に出てきたと言っていましたね。身元は調査中ですが、腕は確かなようです」

「ふうん。イートン伯爵のところのシェフに対抗できるのならおもしろいな。いろいろ作らせてみろ。宮廷で出せるようなものも作れるなら、優遇してやろう」

「はい」

「アイザックも追い出したし、後はナサニエルだな。マデリンの立場を維持するためにこそ必要だったが、コンラッドが王太子になった以上はいなくなってもらった方がいい」

侯爵の喉をワインが通っていく。染み渡るような感覚に、侯爵は満足げに頷いた。


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