王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
*
ザックが異変を感じたのは、初日に泊まった宿を出て領土境の森を抜け、山と山に囲まれた渓谷を通っているときだった。
ぱら……と岩の落ちる音を、ザックの一行は敏感に察知した。もともと、山肌があらわになっている渓谷を通るときは、がけ崩れの危険性があるので、従者たちは気を付けるよう言い聞かされていた。
「アイザック様、お気を付けください」
「ああ」
頷いた途端に、何かが前から落ちてきた。が、それは崖が崩れたものではなく、崖の上の木が、切り倒されて落ちてきたのだ。
「危ない。お下がりください」
護衛に言われるまでもなく、馬が怯えてしまっている。
「アイザック様、何者かが!」
前から、汚れた身なりの男たちが剣を携えてやって来た。
「山賊だ。散り散りになって逃げろ!」
ザックはそう指示し、道を戻り、森に入った。
途中で、ザックは追ってくる山賊に、いくつか疑問点が浮かび上がる。
通常、狙うならば移動速度も遅く、荷を積んでいる馬車のはずだ。人を狙う意図は、本人を狙っているか本人の装備を狙っているか。ザックの剣は、もちろん一流の鍛冶師に作ってもらってはいるが、人殺しをしてまで入手するほど立派なものではない。
(狙いは……俺?)
そこまで思い至ったとき、頭上から大きな声がした。
ザックが異変を感じたのは、初日に泊まった宿を出て領土境の森を抜け、山と山に囲まれた渓谷を通っているときだった。
ぱら……と岩の落ちる音を、ザックの一行は敏感に察知した。もともと、山肌があらわになっている渓谷を通るときは、がけ崩れの危険性があるので、従者たちは気を付けるよう言い聞かされていた。
「アイザック様、お気を付けください」
「ああ」
頷いた途端に、何かが前から落ちてきた。が、それは崖が崩れたものではなく、崖の上の木が、切り倒されて落ちてきたのだ。
「危ない。お下がりください」
護衛に言われるまでもなく、馬が怯えてしまっている。
「アイザック様、何者かが!」
前から、汚れた身なりの男たちが剣を携えてやって来た。
「山賊だ。散り散りになって逃げろ!」
ザックはそう指示し、道を戻り、森に入った。
途中で、ザックは追ってくる山賊に、いくつか疑問点が浮かび上がる。
通常、狙うならば移動速度も遅く、荷を積んでいる馬車のはずだ。人を狙う意図は、本人を狙っているか本人の装備を狙っているか。ザックの剣は、もちろん一流の鍛冶師に作ってもらってはいるが、人殺しをしてまで入手するほど立派なものではない。
(狙いは……俺?)
そこまで思い至ったとき、頭上から大きな声がした。