恋を知らない花~初恋~
それからも忙しい毎日は過ぎていき、気づけば蝉の鳴き声もほとんど聞かれない季節になっていた。
その頃になると新人教育の仕事は半分に減っていた。
一人一人のスキルも知識も上がって任せられることも増えた。
外回りも担当社員に付き添って行くので私が出て行くことも少なくなった。

私は相変わらず営業に回らせてもらえずデスクワークばかりだ。
隣の席には美保ちゃんがいるから退屈ではなかったし、ほぼ毎日一緒にランチを食べた。

最近では定時で帰ることも増え、毎日のようにジムで運動して帰るからよりいっそう体は引き締まった。
たまに拓也とジムで会うと少し話をする。
お見合い相手とはすごく上手くいっているようだった。

別にすごく淋しいわけでもなかったけど前向きに進んでいっている感じもなくただただ日々をこなす感じだった。
楽しくないわけではないけど心にはぽっかりと穴が空いたままだ。

はぁ~、恋なんて知らなくてもよかったのかも。
すごく恋い焦がれてとか、すごく会いたいとか、すごく辛いというわけではないけどふとした時に顔が浮かぶくらいには真中さんへの気持ちを引きずっていた。
いつかこの気持ちを昇華することは出来るんだろうか?
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