恋を知らない花～初恋～

「あ～、うん。ごめん私もデリカシーの無いことをしちゃった…。とりあえず、これから琢磨の奥さんになる身として、琢磨のバカな行動を謝らせて。本当にごめんなさい。」

そう夏樹は言うとセットなど気にせずに深々と私に頭を下げた。

「夏樹、やめて。お願い。このことはもう終わったことだし、私にも非があるの。夏樹ならわかるでしょ？おめでたい日にする話じゃないわ。」

私は慌てて夏樹の肩を起こす。

「こんな日だからよ。きちんとしておきたいの。琢磨からこの話聞いたとき驚いたし、別れることも考えたのよ。でもね、本当はそんな事する人じゃないのよ。」

夏樹にとって私以上にショックな出来事だったんだろう、目に涙が浮かんでいた。

「うん、うん、この前の夏樹の話聞いて岩崎さんがどれだけ優しくて頼りになるかは知ってるわ。それに、あの時のことを冷静に思い返して本気で何かしようとしてた訳じゃないってわかったの。そもそも私がいけなかったんだから。」

「でも私は結衣の…はぁ～、これ以上は今する話ではないわね。今度ゆっくりお詫びをさせて。結衣の大好きなお肉を奢らせてもらうわ。」

夏樹が少し嫌そうに笑う。

「え～！そんな事言うと高いお店に連れて行かれるわよ！」

後ろで話を聞いていた真由美がおどけて言うと美希も声を出して笑う。
皆は私の肉好きを知っており、暗い雰囲気を払拭しようと笑いにもっていってくれた。
岩崎さんだけキョトンと意味がわかっていない様子だった。