恋を知らない花~初恋~
私は一瞬驚いた顔をしたが、お決まりの営業スマイルになる。

「お久しぶりです、城戸課長。」

「えっ?岩崎の知り合いだった?」

あのことは城戸課長は知らないはずで、私と岩崎さんが面識があることも知らないはずだ。

「すごい偶然ですが新婦の山本夏樹は私の大学の同期なんです。」

「課長、こんな美人とお知り合いだったんですか?」

城戸課長と一緒にいた男性のひとりが興味津々という感じでこちらを見ていた。

「そうだ、真中はどこ行ったかな?△△の元営業担当だった川井さんだよ。真中が担当してたからお前たちは会ったことないかもな。」

真中さんの話題になりドキッとする。

「え~、こんな美人営業さんを真中独り占めしてたとかずるいっす。」

後ろの人たちも口々にそんな冗談を言っている。

「さすが結衣ね。その魔性の笑顔に惚れない人はいないわ。」

って私の後ろでボソッと美希がつぶやく。

「改めてお席にご挨拶に伺わせていただきますね。」

私は早くこの場を離れたくてそう言うと、

「いやいや、気を遣わないで。仕事じゃないし。でも川井さんからお酌してもらった酒は美味しいからな。」

と城戸課長から返ってくる。
できればそちらの席には行きたくないんだけどなぁ。

「そう言っていただけるなら喜んでお酌に伺わせていただきます。」

私はそう言うと、軽く会釈をし真由美と美希と新婦側の席へ移動した。
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