恋を知らない花~初恋~
「遅くなりました、城戸課長召し上がってますか?」

「あぁ、川井さん本当に来てくれたの?ありがとう。」

そう言い、やや酔っていてほのかに頬が赤くなった顔を緩ませグラスをこちらに差し出す。
私はそのグラスにビールを注ぐ。

「川井さんは?飲んでる?」

「はい。あちらで友人と食事をしながらいただきました。ステーキ召し上がりました?すごく美味しかったですよ。」

ザルの城戸課長に飲まされるとペースがわからなくなりまた酔ってしまったら困るので話題をステーキへ持って行った。

「あぁ、さっき皆が旨いって言って取って来てくれたのをいただいたよ。また取りに行ってるんじゃないかな?」

そう言って城戸課長がステーキコーナーへ目線を向け手を軽く上げた。
私も振り向くとちょうどお肉のお皿を手に男性たちが戻ってきており、その中に真中さんもいた。
私は笑顔を崩さずに男性たちへ会釈をする。

「あら、先ほどの…川井さん!本当に挨拶に来てくれたんですね!僕、島内って言います。」

と先ほど城戸課長と一緒にいた男性が嬉しそうに声をかけてくる。

「先ほどはきちんとご挨拶出来なくてすみません。私、川井と申します。宜しくお願いします。」

と笑顔で返し、「良かったら。」とビールを差し出すとお皿をテーブルに置き、男性陣がグラスを手にする。
真中さんを入れて3名にお酌をし、ギリギリビールが足りて安心した。

真中さんにビールを注ぐ時にやはり手が軽く震えたがなんとかこぼさずに笑顔でやり遂げた。
それから私に興味があると言わんばかりに島内さんと言う、真中さんの同期の男性がしきりに話しかけてきた。
島内さんは岩崎さんとも同期で今彼女募集中だとか…
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