恋を知らない花～初恋～
私は当たり障り無く返答をしているのを真中さんは困った顔で見ていた。

「島内、もうその辺で。川井さんも仕事で来られてるわけじゃないから。お友達も待ってるだろうし。」

真中さんがそう言って助け船を出してくれた。

「そうだ、そうだ、川井さんも友達が待ってるからそろそろ解放してやれよ。」

と城戸課長がそう言ってくれてるうちに真中さんが私の背中に手を当て、席を離れるよう促してくれた。
私は背中に触れられ、じわじわと背中が熱くなる。

「島内がすいません。あいつ強引だから…」

軽く背中を押されながら一緒にどこへ行くともなく歩いた。

「ありがとうございます。」

「さっき岩崎から聞いてびっくりしたんですよ。まさか奥さんの夏樹さんがお友達だったんですね。」

「はい、私も先ほどお会いして驚きました。」

背中に当てられた手が離れず、私の心臓の速さに気づかれてしまうんではないかと思うほど鼓動が大きな音を立てて打っていた。

「あの時は岩崎が本当にすみませんでした。そして俺も…本当にすみませんでした。」

私の背中から手を離し、頭を下げる。

「やめてください。もう終わった事ですし、私にも非がありましたし。」

「非だなんて…そんな…」

真中さんは悲しそうな顔で呟いた。
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