恋を知らない花~初恋~
「もうっ、みんなで私をからかわないで。それに私、今日は酔うほどお酒を飲んでいません。」

少し怒って言うとそんな私を見てやはり3人は笑っていた。

「では、少しだけ川井さんお借りしますね。」

「はい、どうぞ。少しと言わずにずっとどうぞ。」

美希は笑いながらそう言って私にストールを貸してくれた。
真中さんが外に出てくるって伝えてくれたのかな?

「ハハッ、ずっと外には寒いかもしれませんね。」

真中さんはいつものおどおど感なく美希と話している。
そこでふと気づいた。青木くんや村田課長にも自分の上司の城戸課長や同僚の島内さんにも普通に接している。
私だから?なんで?あぁ、そっか、私のこと本当は苦手なんだ。
私は真中さんに会うと以前から癒されてたけど…きっと真中さんにとっては逆だったのかもしれない…
自分の思考がそこへたどり着くと言いようのない胸の痛みが襲ってきた。

「川井さん?お二人から許可いただきましたし外に行ってみましょう?」

いつの間にか私の目の前にいた真中さんは相変わらず優しい笑顔だ。

「あっ、ヘヘッ、考え事してしまいました。すみません。」

私は真中さんに促されながらコーヒーコーナーへ向かいホットコーヒーを注文した。
そう言えば今日の真中さんはおどおどと言うよりは動きがスマートだ。
私とはあれっきりきちんと話せてなかったし、今日私と話すことですっきり前に進んで行くのかな?
恋なんて気づかなければこんなに胸が苦しくなることもなかったのに…胸の奥がチクチクした。
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