恋を知らない花~初恋~
「いえ、俺も酔ってましたし…あの日をそんな悪い事のように…」

「うん、この話もこれで終わりにしましょう。せっかく紅葉もきれいですし。今日お会いできて良かったです。スッキリですね。」

自分で言って泣きたくなる。
本当は全然終わりになんて出来ないのに。

「ハハッ、スッキリですね。わかりました。本当に、きれいですね。」

真中さんは笑顔でそう言う。

「川井さん、寒くないですか?」

「はい、美希が、先ほど真中さんとお話してた長身の美人の、美希がストールを貸してくれたので。美希ってすごく気の利く子なんですよ。」

「あぁ、谷川さんですか?写真を撮ってくれた方ですよね?」

美希の話になるとパッと顔が明るくなった。

「そうそう、谷川美希です。美人で気が利いて、料理も上手なんですよ。もうひとり一緒にいたのが工藤真由美です。真由美は3歳になる双子のママで今も現役で働いているんですけど、たまにその真由美の子たちを預かってて、子どもたちの相手もすごく美希は上手なんですよ。」

真中さんも美希を気に入ってくれてるのかなって思うと嬉しい反面、呼吸し辛い感覚に襲われる。
きっと真中さんのような彼氏ができたら美希だって幸せなはず…なのに辛くてたまらない。
でも真中さんに悟られるわけにはいかないからいつもの明るい笑顔のお面をかぶる。
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