恋を知らない花~初恋~
「すみません、立ち入った事を聞いてしまったみたいで…川井さんにとって大切な方なんですね。羨ましいです。」

やや苦笑いぎみに真中さんは言う。
きっと真中さんにとって拓也は決して感じのいい人ではなかったんだろうな。

「そろそろ中に戻りましょうか?さすがに冷えたでしょう?」

もう終わりか…
きっともうこんな風に2人で話すこともないんだろうな。

「えぇ、そうですね。貴重なお時間にお付き合いいただいてありがとうございます。」

私は笑顔を崩さないように軽く頭を下げ、室内に入るドアへ向かった。

「あの、川井さんたちは二次回も参加されますか?」

後ろからそう聞かれ、振り返ると真中さんは真剣な顔をしていた。

「はい。そのつもりです。真中さんたちも、参加されますか?」

「はい。城戸課長は来られないかもしれませんが同期は参加予定です。」

私が答えると笑顔に戻った真中さんがそう答えた。

室内はやはり暑いくらい暖房がきいており冷えた体を温めてくれた。
席が真逆なこともあり私たちはドアの前で挨拶をし、わかれた。

「おかえり~!早かったわね。初恋の君とのデートは楽しかった?」

冗談混じりに美希からそう言われる。

「うん…ストールありがとう。」

私は肩に掛けていたストールを軽くたたみ、美希に手渡した。
美希の顔を見るために俯いていた顔を上げると生暖かいものが頬を伝う。
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