恋を知らない花~初恋~
「川井さんのこと、欠陥品だなんて思いませんよ。少なくとも俺の中では完璧に近い人です。人にドライヤーをかけるのって難しいですね。」

それから私は髪を乾かしてくれている真中さんの手の感触に集中していた。

「これでどうでしょう?なんだかボサボサになってしまいましたね…すみません。」

頭を横に振り、ドライヤーをかけ終わったことが残念だとさえ思ってしまっていた。
私は真中さんの隣に座り直した。

「ありがとうございました。ところで、また記憶がないんですが、私また何かやらかしました?」

「いえ、タクシーで寝てしまったんですよ。川井さんの家に着いたので起こしてみたんですが起きられなかったので、どうにか部屋にたどり着いたとしてその後のことが心配だから…すみません、勝手にうちに連れて来てしまいました。」

「そうだったんですね。本当にいつもお酒が入るとご迷惑ばかりかけてすみません。」

「川井さん無防備すぎます。あなたはもっと自分の魅力を自覚して危機感を持つべきです。今だって…」

真中さんは俯き、両手で顔を覆う。

「すみません、いつも真中さんに甘えてしまって…。ただ、信用がないかもしれませんが普段はもっとしっかりできてるんです。」

私は真中さんのほうを向き腕に手を当てた。
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