恋を知らない花~初恋~
私はキッチンのカウンター越しに水を渡す。
それと交換するように昨日着ていたブカブカのカーディガンを渡された。

「下に散らばっていた服を拾ってベッドの上に置いてます。きっと今の川井さんの格好は目に毒なのでこれ着てください。」

拾ったって下着も?
カウンターで見えないけど、下着も着ずにかなり際どい格好だ。

「ありがとうございます。目に毒って…フフッこんなところにキスマークつけたのに?」

私は下を指差して言った。
太ももの内側あたりに3つほど仄かに赤く吸われた痕が残っている。

「それはだって…」

私はTシャツのえりもとを引っ張って胸を覗き込んだ。

「他にもきっとありそうですね。前は一つも付けなかったのに。」

「それは…自分のって印です。逃げられても忘れないように。」

「フフフッ、昨日も私が逃げるって心配してましたよね。」

「そりゃ、ことごとく逃げられましたからね。あんまり煽られると、また抱えてベッドに連れて行きますよ。」

真中さんはいたずらっ子のように笑って言った。
その初めてみる彼の表情に嬉しくなる。

「どうぞ、私は真中さんのものなので。」

渡されたカーディガンを羽織って前のボタンを一つ留めると私もイタズラな笑顔で真中さんの目の前に行く。
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