恋を知らない花~初恋~
上手く呼吸ができず、恐怖で身体が震えた。

「や、やめて…」

声を上げたいけど喉の奥が締め付けられたようになり、やっとか細い声が出ただけだった。

「フッ、怖いの?どうせ仕事のために誰にでも股開いてるんだろ?そんな演技いらないよ。」

私は声が出ず、変わりに目から涙が溢れてきた。
自分の軽率な行動が招いた結果だ。

「泣いたって許さないよ?真中みたいな真面目なヤツ騙して。そこまでして契約が欲しいんだろ?」

「ちがっ…」

私は必死で首を振る。そんなんじゃない…
その時、応接室の電話が鳴りだした。
岩崎さんは舌打ちをし、なにか呟くと私の上から退いた。

「救われたな。」

そう言うと電話に出る。
私は慌てて荷物を持ち、応接室から出た。
足が震えて上手く歩けない。
目からは涙が溢れて止まらなぃ。
いつもなら受付に挨拶をして出るけどそんな余裕はなかった。
急いで会社から出ると前の通りでタクシーを捕まえた。

「川井さんっ。」

私がタクシーに乗り込み、ドアが閉まる瞬間名前を呼ばれた。
窓越しに声のした方を見ると慌てて真中さんが走ってきていた。

「あ、あの、とりあえずすぐ車を出して下さい。お願いします。」

まくし立てるように運転手さんにお願いをすると、真中さんが追い付く前に車を出してくれた。
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