恋を知らない花～初恋～

私が到着すると村田課長もすぐに小走りで店に入ってきた。

「大丈夫か？何された？」

「大丈夫です。迫られましたけどあちらもきっと本気ではなかったんだと思います。何もされてはいません。」

何された？って課長どこまで知ってるんだろう…

「はぁ～、良かった。お前、顔…涙のあと付いてる。」

そう言ってハンカチを差し出された。

「ハンカチはあります。ありがとうございます。」

それから今日、岩崎さんと話した内容や、自分が真中さんにしたことを課長に話した。
課長は私の話を聞き、難しい顔をしてため息をつく。

「まぁ、男女の仲だから真中さんとお前のことは口出すつもりもない。そもそもプライベートの話だしお前が枕営業をするはずがないと俺は知ってるからな。ただ、仕事中に岩崎さんから受けた対応は許されることではないと思ってる。女性営業マンが受けた性被害は俺も何度か聞いたことはある。どうしてもあちらの方が立場が上のことが多いしな。だからそういうセクハラ紛いのことをしそうな会社をお前には振り当ててなかったんだ。」

「今回の事はきっと契約する代わりにって言うわけではなくただ岩崎さんも私を許せなかっただけなんだと思います。本気で何かするつもりならすでに何かされていたと思うし…本当に申し訳ありません、私の責任です。」

私はテーブルに手をついて頭を下げる。