恋を知らない花～初恋～
「はじめまして、鳥越です。イケメンだなんて照れます。今日は伊藤さんも一緒にご飯行きます？」

おぉ、そうだ！初めて拓也に会ったときはこんな感じで誰にも害を与えません的な紳士な笑顔をする人だった。
猫を被ってる拓也を見て少し笑ってしまった。

「フフフッ、いろいろあってね、拓也にバトンタッチするまで一緒にいてくれたの。ありがとう、美穂ちゃん。もう大丈夫だから。こんなとこまで付き合わせてごめんね。」

「えっ？何かあったのか？」

拓也は驚いて私を見てたけどすぐに美穂ちゃんを見た。

「伊藤さんどこまで帰るの？タクシー捕まえようか？」

「あ、いえ、電車で帰ります。」

「でも美穂ちゃん、駅まで遠いし…タクシー代くらい出させて。」

私がそう言うと美穂ちゃんは顔の前で両手を振って拒否する。

「そんなっ、先輩は被害者なのに。お金は出さなくていいです。遠いって言ったって10分くらいだし、駅も3駅先なだけですから。」

それを聞いていた拓也は前の通りでタクシーを止めた。
運転手さんにお金を渡すと、

「さぁ、伊藤さん、乗って。」

と爽やかな笑顔で美穂ちゃんを見て言った。

「うぅ～、申し訳ない…ありがとうございます。」

彼女は本当に申し訳なさそうにタクシーに乗り込んだ。

「美穂ちゃん本当に今日はありがとう、また明日ね。」

美穂ちゃんは何度もタクシーの中で頭を下げていた。
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