恋を知らない花~初恋~
拓也が怒っているのを初めて見た。
しかも私のことで怒るなんて…。

「自分のことはわかってるつもりだし、こんな私でも押さえ付けられたら怖かったし、震えが止まらなかったわよ。声だって出ないし、鍛えてたはずなのに力だって出なかった…」

私は応接室で感じたことを口に出して言っているうちに勝手に涙がこぼれてきて、また小さく手が震えていた。

拓也は呆れた顔をして私の隣に座ると優しく肩を抱き、手を握ってくれた。
そんな拓也の好意にひどく安心した。

「ほらな、お前は自分を責めてばかりで自分の気持ちに向き合ってやってなかっただろ?確かに想像するに、真中ってヤツは周りが出て抗議するくらい弱くて真面目なんだろうとは思うし、お前が言うように俺たちのような身体の関係だけなんてもんに縁のないヤツなのかもしれないけど俺らには俺らのやり方があって誰でもいいわけではないし、そんなお前が手を出したことは悪いと思う。でも何されても平気なわけではない。」

拓也がこんなにも私のことを考えてくれてるなんて…私たちの間にはセックスしかなかったのに…
私は拓也との関係が少し親密になったように感じた。そこに恋愛感情があるかはわからないけど私のために怒ってくれたり、自分の時間を使ってくれたりする程度には近づいたと思う。
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