恋を知らない花~初恋~
真中さんはずっと私の顔を見ていた。
私も真中さんを見つめ直した。

「真中さん、先日はお酒が入っていたとは言え、本当に失礼なことをいたしました。申し訳ありません。この度、担当を外れることになりました。青木が後任し、もう顔を合わせる機会がないように努めます。どうかこれからも弊社とのお付き合い宜しくお願いいたします。不備がないように青木には申し送りをし、しばらくは村田も同行いたします。真中さんを傷つけてしまい本当に申し訳ありませんでした。」

泣くな、泣くな。
そう自分に言い聞かせ声は震えてしまったが謝罪をすることができた。
涙が出てしまう前に立ち去らなければ。
私は立ち上がり丁寧に頭を下げた。

「では私はこれで失礼いたします。」

そう言うとドアの方へと急いだ。

「あの、待って、待って下さい。」

後ろから真中さんの声がした。
でももう涙が溢れそうで振り向けずその場で止まることしかできなかった。

「謝るのは僕の方です。その…」

「いえ、真中さんは被害者であって謝るのは私です。軽率な行動、本当にごめんなさい。」

顔を見られないように振り向きざまに頭を下げて急いで部屋を出た。
とりあえずトイレへ駆け込むとしばらく流れるままに涙を流した。
正直、自分でも何でこんなに涙が出るのかわからなかった。
昨日のショックからなのか、胸が痛くてたまらなかった…。
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