恋を知らない花~初恋~
そう言うとまた拓也は真中さんを睨むように見ていた。

「あっ、ちょっと…拓也?大丈夫?もう真中さんとは関わることもないから…ね?今日は仕方がなかったのよ。」

今にも拓也が真中さんに文句言い出しそうで焦った。
真中さんは気まずそうな顔をしてこちらに歩いてきた。

「あ、あの、川井さんひとりで帰られるのかと思って夜ですし、危ないのでタクシー乗るまで見届けようと思って戻ってきたんですけど…お知り合いの方がご一緒だったんですね。」

真中さんはそう言うと、拓也に会釈した。

「あ、ありがとうございます。私はひとりで大丈夫ですので…」

拓也は私の肩に手を置いたままで、わずかに掴んでいる力が強くなった。

「真中さん、お気遣いありがとうございます。責任持って俺がタクシーに乗せますので安心してください。ではこれで、失礼します。」

拓也が笑顔になり、そう言うと軽く頭を下げて私の肩を掴んだまま大通りへと歩き出した。
私も慌てて軽く頭を下げた。

「ねぇ、拓也?今のはちょっと真中さんに失礼だよ。しかも肩!勘違いされるじゃない。」

「いいだろ別に。勘違いさせとけよ。男らしくない。お前にだけ責任取らせるようなヤツ。もう忘れろよ。」
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