恋を知らない花~初恋~
「実はここに部屋を取ってあるんだ。」

「えっ?部屋まで?プロポーズされて甘い夜を過ごすカップルみたい。フフっ」

って冗談っぽく言うと

「そのつもりだけど?」

なんておどけて拓也ものってくる。
二人とも程よく酔ってるからか冗談を言い合ってよく笑った。

部屋に行くとシャンパンも用意されてあり驚いた。
今日でお別れなのが嘘みたい。

「実は今日午後半休もらってたんだ。そして結衣の部屋の俺の物は片付けた。もし残ってたらもう捨てといて。」

「うっ…」

返事が喉で詰まる。
気づけば涙が頬を伝っていた。
泣いている自分に驚いた。自分はどこか感情が欠落しててきっと拓也とのお別れも爽やかに笑顔でできると思ってたのに…

「ハハッ泣いてもらえるとは光栄だよ。」

そう言って拓也は私を優しく抱きしめてくれた。

「ヘヘッ、別れの時がこんなに淋しいなんて思わなかった。」

私も拓也の背中に手を回してギュッと抱きしめた。

「言うつもりなかったけど見合い相手の写真を見るまでは迷ってたんだ。このまま結衣と一緒にいる人生もありなんじゃないかって。」

「うん、それ私も考えた。一緒にいてこんなに楽しくてリラックスできるのになんで二人とも一緒にいる道を選ばないんだろうって。」
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