恋を知らない花~初恋~
「俺はそれなりに結衣との人生を想像してたよ。きっと子どもはつくらないだろうとか、美味しいものを食べ歩く旅行に行ったり、一緒に料理をしたり、買い物したり楽しいだろうなって。」

「楽しそう。」

私は拓也の胸に耳を当て声の振動を感じながら拓也の想像していたことを私も想像してみた。

「でも相手の写真を見ただろ?お前は顔色一つ変えずに眺めて、悪い感じはしないって言ったんだ。きっと一緒にいる人生を選ばない理由はそこだよ。お互い恋愛対象としてではなくてセックス込みの友だちとしての『好き』なんだ。だから俺は自分の欲を優先するし、結衣も執着する程ではない。」

「フフフッ、さすが拓也だね。納得できる分析よ。」

私は誰にもこの先恋なんてできないだろうし拓也にも恋はできなかったんだ。

ホテルのお風呂は家よりもはるかに広くて、
二人で頭を洗い合ったり楽しくじゃれあいながら入った。
それから、さっき飲みそびれたシャンパンを飲んで何をするわけでもなくいつものように楽しく話をした。
それはベッドの中でも同じで、べったりとくっついてはいるものの交わることもなく話続けた。

お互いの第一印象は実はそんなに良くなかったことや、私は美味しいものにつられて拓也と会ってたこととか最後だから…笑いながら本音で話せた気がする。
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