君がどこにいても

香坂廉（こうさかれん）は、不思議な場所にいた。夕焼けの照らす中、一本道を歩いている。この場所は、どこかで見たことがある気がする。

「綺麗だな……」

道の周りには、雛菊の花がたくさん咲いている。花畑の真ん中にできた道を、廉は景色を楽しみながら歩いていた。

しばらく歩いていると、楽しげな笑い声が聞こえてくる。その声を聞いた刹那、廉は走り出した。その声を、廉はよく知っている。一番大切な人の声なのだから。

しばらく走ると、花畑の中に人がいるのを廉は見つけた。明るい腰ほどある髪を揺らし、雛菊の花冠を作っている。

「あの、あなたは……！」

廉が声をかけると、その人は廉を見つめて無邪気な笑顔を見せる。

「綺麗でしょ？廉くん」

白いワンピースを着た女性は、廉に近づいてその手を引く。そして二人は花畑の中を歩き始めた。

そうだ、この場所はーーー。この人の名前はーーー。



廉が目を覚ますと、目の前に広がるのは雛菊の花畑ではなくいつもの自分の部屋だった。

廉は体を起こし、テーブルの上を見る。そこには、写真が飾られていた。雛菊の花畑で廉と恋人が笑っている。